骨のある部屋

@honebeya206

大哺乳類展2 2回目

昨日は家族と大哺乳類展2に行ってきました。今回は解説パネルで説明されていない骨を中心に書いていきます。

 

 

 

骨格標本についていたり、なかったりする骨】

骨格標本を思い浮かべると頭・脊椎・腕・脚の骨を想像するでしょう。しかし、それらの骨以外に骨はあります。今回確認できた骨は舌骨・陰茎骨・血管弓骨です。

 

「舌骨」

舌骨とは舌や咽頭喉頭の基部をつくる骨でほとんどの脊椎動物にはあるはず。形は哺乳類ではXのような見た目をしています。舌骨がついていない骨格標本は多くみられるので、付いていると貴重なものを見た気持ちになります。

 

f:id:honebeya206:20190408091105j:plain

顎の後ろについてる逆Cの字の骨がムササビの舌骨。

 

f:id:honebeya206:20190408091353j:plain

こちらはセイウチの舌骨。

 

確認できたのは2個体分だけでした。

f:id:honebeya206:20190408091701j:plainこちらは舌骨がついていないドール(見た目は大きなキツネをした動物)の骨格標本です。舌骨がないとスッキリした印象。

*このドールの頭骨天辺付近にある横に入った黒い線は、脳を取り出すのに骨を切断した痕だと思われます。他の動物にもあったりなかったり・・・。

 

「陰茎骨」

亀頭内部にある骨でヒトや一部の動物を除いて雄が持つ骨。ヒトは特定の病気になると骨が形成されると「動物のおちんちん学(浅利昌男著 緑書房)」に書いてありました。陰茎骨は形が種ごとに違うので種の同定にも用いられるそう。陰茎骨のコーナーは第一会場の最後「産む、育てる」にありますが、骨格標本にもついていて、4個体分の陰茎骨を確認できました。

 

f:id:honebeya206:20190408093209j:plain

ショウガラゴの陰茎骨(意外と長い!)

 

f:id:honebeya206:20190408095336j:plain

 骨盤からニョロっと出て後ろ足に隠れているのがニホンテンの陰茎骨。

 

f:id:honebeya206:20190408095528j:plain

 ラッコの陰茎骨

 

f:id:honebeya206:20190408095637j:plain

こちらはセイウチ。ラッコの陰茎骨と比較すると形の違いがよく分かる。

「産む、育てる」コーナーにも9種の陰茎骨があるので形の違いを比較してみて下さい。

 

「血管弓骨」

尾椎にある骨で、血管弓自体が「椎体腹側を走る大動脈を囲む(「家畜比較解剖図説上巻」加藤・山内共著 養賢堂)」役割を持つよう。家畜比較解剖図説上巻には「反芻類や食肉類に血管弓の残りが見られ、これが突起状に現れる」と書いてあった。

骨格標本を観察すると尾椎の一部に尖った骨が見られた。

f:id:honebeya206:20190408100922j:plain

 ライオンの血管弓骨

 

f:id:honebeya206:20190408101040j:plain

ニホンテンの血管弓骨?

 

f:id:honebeya206:20190408101218j:plain

カンガルーの仲間にも突起があった。これは血管弓骨と同じと言っていいのかわからない。カンガルーの尾は第五の脚と言われているので、鯨類のV字骨(尾を動かす筋肉を支える)と同じ役割をしているのでは?と思っているからです。

カンガルーの尾は第5の“脚” | ナショナルジオグラフィック日本版サイト

有袋類には前恥骨という育児嚢を支える骨もあります。

標本は語る (参考「第2部 展示解説 動物界 哺乳類の多様性と標本から読み取ること」)

 

 

 

骨の基本的なパーツを頭に入れて標本を作ると思いますが、体の中には細かい骨がいっぱいある。耳の中にある耳小骨や指と指の間にある種子骨など小さな骨がたくさんある。

私はメスには陰茎骨のようなものはないとばかり思っていたが、「陰核骨が存在する」とキリンの8番目の首の骨を発見された郡司芽久さんがおっしゃっており、その研究論文が紹介されていたので、ここでも紹介します。

The baubellum is more developmentally and evolutionarily labile than the baculum

 

 

【鯨類の骨盤骨やマッコウクジラの歯、V字骨

 

「骨盤(寛骨)」

 鯨類には後ろ脚の痕跡の骨盤が筋肉中に埋まっています。なので鯨類の骨を見る前までに見てきた動物達の後ろ脚と違って、骨と骨とで関節していません。

f:id:honebeya206:20190408180011j:plain

写真がブレブレですが、半身になったマッコウクジラの骨盤が鉄でぶら下げられています。他の鯨類にも骨盤がついています。決して「どこにつければ良いのか分からない骨」ではありません。

*鯨類の骨盤を専門に研究している方の論文が出てきたので、URLを載せます。簡単に骨盤について説明してあるので参考にしてほしいです。

www.jstage.jst.go.jp

 

マッコウクジラの歯」

マッコウクジラは下顎にしか歯がないのだとばかり思っていましたが、上顎にもあるようで、下顎の歯とは違い丸まっているので寄生虫のようでした。でも、歯です。

f:id:honebeya206:20190408181308j:plain

何故丸まっているのでしょう・・・?不思議。

 

「V字骨」

ずっと陸性哺乳類の骨を見ていたのでV字骨という骨があることが衝撃でした。尾を動かす筋肉をつけるのに重要な骨だそうです。

f:id:honebeya206:20190408181839j:plain

下に出っ張っているのがV字骨。これがあるところから尾椎になります。そして尾椎の始まり付近に骨盤があります(写真右下で見切れている骨)。

 

一般社団法人小笠原ホエールウォッチング協会さんの記事で鯨類の骨について簡単に紹介されているので載せておきます。

http://www.owa1989.com/admin/wp-content/uploads/047.pdf

 

 

今回は見逃しがちな骨について書きましたが、次行った報告は詳細な説明を書けたらなと考えています。

会場内は混雑しているので標本を見るので疲れてしまうので、音声ガイドを聞くか、図録を購入して時間がある時に内容を把握することをオススメします。

 

【最後に】

ブログを書くのに調べながら書いています。クジラについて検索していたら、鎌倉で打ちあがったシロナガスクジラについての報告を発見したので共有したいです。

http://nh.kanagawa-museum.jp/files/data/pdf/tobira/24-4/tobira93_3taru.pdf

「自然科学のとびら」は神奈川県立生命の星・地球博物館の「研究活動・資料」から過去のものまで閲覧できるので、興味ある方はこちらもご覧になってください。

神奈川県立生命の星・地球博物館

 

 

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

【宣伝】

デザインフェスタvol.49 5/18(土)、5/19(日)出展。場所:F-122

骨のある部屋@デザフェス両日F122 (@honebeya206) | Twitter

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------