毛の標本-ダニまで大事-
私が仮剥製作りを教わりにいった時、学芸員さんから「毛についたダニが研究になる」と教えていただきました。
*標本は燻蒸(殺虫・殺菌)してから収蔵室に入れるので毛についてるダニは死んでます。虫が発生しないような工夫が博物館では施されてます。
シカの標本からはシカについての情報のみだと思っていた私は驚きでした。毛についてる「ダニ」が研究になるんですよ?シカの標本と言われると、採集地・採集日・雌雄・体重・体長…など基本的に記録するデータ以外にダニが加わることに驚きを隠せないです。
以前、イタチの皮を鞣した時に、ピンセットで死んだダニを取ってしまっていて、勿体無いことをしたなと反省。誰でも触れる毛皮にしたかったので、ダニを取ったのですが…。でも、採集地や採集日が書かれていないイタチだったので、データにはならないのですが、これからは気にしてみようと思います。
動物の感情
「数を数えるクマ サーフィンするヤギ 動物の知性と感情をめぐる驚くべき物語 Belinda Recio著」という本を読み始めました。
人間じみた行動をする動物達が面白い。
研究のデータを解釈する時に擬人化しすぎるのは危険な気がしますが、以前読んだ本で「その目で見た行動がすべてだ」と書かれていたように、動物の人間じみた行動を否定するのではなく、受け入れるのが、これからの人と動物の関係を考えるうえで大切なんでしょうね。
この本を読んでいると、私のお尻をつついた九官鳥は「こっちを見て!」、「からかってみよう」、「私にお尻を向けるな!」このどれかを思っていたのか、どれでもないのか、思い出して気になってしまいます。
胃内容分析
本当に実現するかどうかは分からないですが、学芸員さんから胃内容分析の勉強のお誘いを戴きました。私は動物が何を食べていたか調べる、胃内容分析も糞分析もしたことがなく、大学研究室の仲間がやっていたことを必死で思い出しています。
胃も糞も肉眼では何を食べていたか分からないので、顕微鏡で観察できるような処理をします。この観察がすごく大変で、小さな破片から「植物」か「動物質」、「人工物」とまずは分からなければならないですし、例えば「動物質」なら「脊椎動物」か「節足動物」なのか、節足動物だったら「アリなの?コガネムシなの?何アリなの?」と細かく見る必要があるそうです。
私は「これは骨ですか?」とよく聞かれることがあったので顕微鏡を覗いたことがあるのですが、小石のような破片があったり、何かの触覚だけ混ざっていて、気が遠くなる思いをしました。
秋になると退官された先生から「糞分析をしている人は木の実が落ち始めるから、木の実とそれを落とした木をよく観察しなさい」と研究室生全員にメールが届いていました。
私も図鑑を持って外に出て、観察したいです。研究の質をよくするために。
連続講座 1
クジラを対象とした博物館イベントの第1回目に参加してきました。今日は座学と顔合わせ。座学では博物館の役割やクジラについてのお話でした。
博物館の役割についてのお話を聴いて、「動物の勉強をして博物館と接点があったから知っているだけで、機会がなければずっと知らないままだったかもしれないな」と感じてました。
数年前までは博物館って研究者しか関われない場所で、一般の人は学芸員さんとの接点もない場所だと思ってました。展示の解説版をこちらが読み取るだけの一方通行なイメージ。
実際はこの連続講座のように「教育普及活動」を行ったり、標本作製のボランティアを募集していて、私達市民が興味あることに答えてくれる場所でした。
クジラのお話は、クジラ好きな学芸員さんの熱意がすごい!クジラの進化やエサの食べ方、年齢の調べ方、分類、行動…一つの動物を説明すると色々な切り口があって、盛りだくさんな内容だったのに45分くらいでスッキリまとまっていて、記憶に残りやすい。
博物館の役割を念頭に置きつつ、第7回講座がある2月にクジラの展示をするので、どんな展示にするか考える必要があります。
クジラの何を伝えたいだろう?
クジラについて何も知らなければ、何が記憶に残りやすいだろう?
仮剥製 作り方
昨日教えて頂いた仮剥製の作り方を私が忘れてしまわないようにメモとして書きます。
今回の対象動物はアカネズミです。
<標本の計測:鉛筆で記録するように>
記録用紙にサンプルデータを書きます。
・作成日
・作成者
・サンプル番号
・採取地
・採取日
・種名
・体重
・全長(鼻先から尻尾の先までの長さ)
・後足長(踵から足先まで)、爪ありと爪なし
・尾長
・耳長(耳の穴から耳の先端まで)
・性別
動物の大きさ、計測する人によっては項目が増えたり・・・。
アカネズミは幼獣の時から後脚が大きいらしく、小さい個体は計測値からアカネズミと判断したり、慣れている人では後脚を見て分かるそう。成獣になると背中の毛が茶色でお腹が白い綺麗な毛色になります。
<剥皮:皮は切っても内蔵は切るな>
お腹を十字に切ったり、横一直線に切ったり、後で縫うことができればこれといった決まりはない。
私は縫うのが下手くそなのであまり穴を大きくしたくないので、下図左の緑線で引いた箇所にハサミを入れました。
まず、後脚を外すために両脚とも脛のあたりで骨を切断(緑点線)。その後、尾を皮から分離。尾は指で全体をよく揉み、ものすごく慎重に皮を剥くと途中からスルッと剥ける。
後脚が終わったら、両手首付近まで皮を剥き尺骨・橈骨を切断(緑点線)。
頭まで皮を剥く。剥けると皮がひっくり返った状態のままですが、そのままで。
<防腐処理:まるで天麩羅>
剥いた皮はミョウバンとホウ酸を半々に混ぜた粉をまぶす。
<縫う・削る・詰める:家庭科の成績がものを言う>
防腐処理した皮をひっくり返し口を縫う。口を縫わなければここから綿が出てしまう(上段左)。
尻尾はこのまま乾燥させると奇妙な形になってしまうので、竹ひごをカッターで尾の太さまで削り、尾へ入れる。末端まで入れることが大事(上段右の緑)。
綿を頭に詰め(下段左の緑)、腕や太ももにも綿を詰めて胴体にも詰める(下段右の緑)。胴体に詰める綿は一塊にしないと標本が乾燥した時に変なクビレが出来る。胴体に突き出た竹ひごはお腹側にくるように綿詰めする。
最後に開腹した場所を縫う。
<乾燥:最後の仕上げです。お疲れ様でした。>
発泡スチロールに標本をまち針等のピンで固定します。両手両足にピンを刺し(図の赤い丸部分にピンを刺す)、ヒゲの向きや耳の形、姿勢を整え乾燥させます。ちなみに後脚は足の裏が表ではなく、甲が表にくるようにしてました。
この後は標本をどう管理するかによるので分かりません。
切断した骨が皮を突き破ったり、開腹した場所が知らない間に広がっていったり、まだまだ練習が必要です。二匹目は上手くいったと思うのですが、乾燥したらガビガビになるかな?