変わった角
標本を触っているといつもとは違う個体と出会います。
左の個体は絵に描くような角をしていますが(それでも左右非対称)、右の個体は角の枝の数が多かったり、角が後ろに反り返ったり…。角が後ろに反り返った個体はどうやって他の雄と角を組んで戦っていたのだろうか?
角の枝の数は栄養状態で増えたり減ったりするそうです(高槻成紀先生の書籍か論文にありました。探します…。)。なので、右上の個体はとてもえい栄養状態が良い年だったのですかね。死因は何だったのでしょうか。
角は貴重なカルシウムを投資したにも関わらず、もったいない(?)ことに毎年生え変わります。後ろに反り返った角と一生付き合っていくわけではないです。毎年変わることはメリットにもデメリットにもなりますね。
他にもビックリした角が…。
右の写真に注目すると、角が角を飲み込んでいます。多くのシカでは左の写真のような生え方になるのですが、この個体は角が角を飲み込んでいます。ちなみにこの写真は左右どちらも同じ個体の角です。
片方は多くのシカと同じ角の生え方をしているのに、もう片方はいつもとは違う生え方…なんとも不思議です。
もし「標本は一つでいいや」と思い、たまたま後ろに反り返った角を持つ個体や、角が角を飲み込んでいる個体を集めてしまうと変わった個体であることに気が付きません。こういった点でも多くの標本を集めることに意味があるのだと感じます。そして多くの標本を見れるからこそ、こういった面白い個体に出会えます。