骨のある部屋

@honebeya206

コウモリの仮剥製

先日、博物館で開催された標本作成勉強会に参加してきました。

今回解剖したのはアブラコウモリという人家によく住み着く小さなコウモリです。「えっ?こんなところに?」と思う場所でも飛んでる身近にいるコウモリで、大きさは翼を広げると画面が大きめなスマートフォンくらいで、体はお札の縦幅くらい小さな動物です。


標本にする前に計測が必要なので、ノギスを使って計りました。イタチやアカネズミ等も同じように計測していくのですが、この時にコウモリらしい特徴を実感。後ろ脚の指がコウモリはどうしても真っ直ぐにならない。普通、四つ足で歩いて指のある動物は死んで冷凍しても、解凍してマッサージしてあげると指が真っ直ぐになります。でもコウモリはいくらマッサージしても指が曲がったまま。これはきっと、コウモリの生活がこうさせているのだと思いました。

コウモリは岩などにぶら下がって休憩したり眠ったりします。その時に余計な力を入れないよう、楽にぶら下がれるように爪がフック状になったり、筋肉の機能がぶら下がるのに適したようになってるそうです(鳥が寝る時に落ちないように筋肉が勝手に収縮するのと同じと考えていただきたい)。なので、コウモリにとって曲がった指は曲がった指ではなく、これが普通なのでしょう。コウモリの指の話は本で読んでいたので既に知っていましたが、ここまで指が真っ直ぐにならないことを目の前で知れることが標本作りの面白さだと、新しいことに気がつく度に思います。

計測が終わったら、いつものように皮を剥いていきます。お腹に縦に線を入れて、上腕と胴体、大腿骨と胴体を切り離します。尻尾の皮も剥くのですが、ネズミと違ってとても大変でした。コウモリの尻尾は皮と骨を分離しようとすると、皮が骨についてきてしまい、靴下を勢いよく脱ぐと靴下が裏返ってついてくるのと同じように、皮が裏返ってしまうのです。楊枝よりも細い尻尾の皮を元に戻すのにとても時間がかかり大変。しかし、諦めてしまうと不恰好なコウモリになってしまうし、尻尾と後ろ脚に尾膜という飛ぶための膜があるので、尻尾を真っ直ぐにしないと尾膜が尻尾に引き込まれてハート型になってしまう。諦めずピンセットで元に戻してあげるのに20~30分かかりました。

全ての皮が剥げたら今度は綿詰めをします。尻尾は針金を通すのですが、この針金が中々入っていかない。元々尻尾が細いので太い針金は使えず、細い針金はすぐ曲がるので、ちょっと押しただけでもう入らない。剥いた皮はペッタンコになってるので、それを華奢な針金で押し通すのが本当に大変。力任せにやると、針金が曲がるか皮に穴が開きます。穴が一度開いてしまうと、針金が何度もそこから顔を出すことになり余計にイライラする。この針金通しだけに40分はかかったのではないでしょうか。もう当分やりたくない。

針金通しが終わったら針金を抜かないように、綿を詰めて縫って、段ボールに針でコウモリを張り付けて形を整えて乾燥させます。
下の写真が私が作ったコウモリですが、無理に飛膜を広げすぎて体が歪んでます。この時は計測から完成まで3時間半くらいかかりました。自宅にアルコール浸けになったコウモリがいるので、仮剥製にしたいなと考えていたのですが、気が引けてます。どうしようかな‥。
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