骨のある部屋

@honebeya206

博物学に学ぶ進化と多様性 聴講

東京大学駒場博物館で開催されている特別展「博物学に学ぶ進化と多様性」の市民公開講座「博物標本から進化を語る」を聞いてきました。

 

骨が好きなので「ホネから探る動物の暮らしと体作りの進化」という題の講演は特に熱心に聞きました。

このお話では「動物の体作りの順番は生後にどういう生活を送るかに左右される」ということが結論でした。冒頭で演者の方は「同じものを集めることの意味は?と聞かれることがある」と話し、その答えの述べずに進行していきます。

 

基本的に動物の体は「巣」の有無で晩成(例:ヒト)か早成(例:シカ)か左右され、体が大きいほど妊娠期間がながくなる(有袋類は例外)というお話の後にヒト・カンガルー・コウモリに焦点を当てて進行していきました。

胎子の前肢・後肢は同じような比率で成長していくそうですが、カンガルーやコウモリは違うそうです。出生直後のカンガルーが動く映像が流れたのですが、それは前肢が発達しており、後肢が確認できない程未発達な不思議な形をした幼獣が映っていました。

f:id:honebeya206:20180825235332j:plainこんな感じの・・・。

前肢が発達しているのは子供が母親の袋を目指して体をよじ登るから前肢を重点的に発達させ、後肢を後回しにしているそうです。この話は今年の4月頃に出版された「有袋類学 遠藤秀紀著」にもありますが、まさかここまで後肢が未発達だとは衝撃でした。

では、コウモリは?前肢が発達するのかと思いきや後肢が発達するそうで、これは生まれてもすぐに飛べるわけではなく、母体にしがみつくために後肢を発達させるとのことです。

 

講演の冒頭の「同じものを集めることの意味」は「一見どれも同じに見える標本を集め、比較することでこの成長過程の違いが明らかになる」というのが答えでしょう。

 

標本を集め比較することにはまた別の意味もあります。この講演では種の比較でしたが、過去と現在、地域の比較もあります。一度集めない期間があると、もうどうやっても過去は取り戻せません。その動物があの時どんな生活をしていて、今に繋がっているのか知る術を無くします。また、例えば、「シカのことを知りたければシカだけ集めて、昆虫の標本はいらないんじゃないか?」と思われるかもしれませんが、シカを知るには植物を見る必要があり、その植物が昆虫と密接に関わっていたりします。全く無関係そうに見える動物がどこかで関わるので、何かを明らかにするには多くの標本が必要になります。なので、一見無駄に見えてもそれは無駄ではないのです。