クジラヒゲ
このヒゲ板の裏を見てほしくて頑張ってきました!!数年前に初めて見た時から「生き物好きには絶対に見てほしい、知ってほしい」と思い続け、よくやく叶いました!!!
ハエに集られても、ワモンゴキブリににじられても、反応できないくらい体力がなくなる中、よく頑張った自分(実際はバテてた)。
曇っていても衛生面からカッパを着て作業するのは無謀だった。途中から暑すぎてカッパをぬいでドロドロになりながら廃肉を引きずり、岩場を移動しました。
クジラのヒゲ板の単体は見たことある人いるかもしれない。私が初めて見たのはヒゲ板(先端から後端まで)を運んだ時で、集合体の裏面を見たときにとても驚いた。この小さな穴から上顎に伸びる神経が出ていたらしい(私は見ていない)。
知ったところで何になるの?と思う。けれど、知らないことを知るのは純粋に楽しい。私が骨を作って活動する根幹は揺るがないなと改めて感じた。
いつも、クジラ関係のそれっぽいことをしてる雰囲気は出していたけれど、写真とはっきりとしたコメントが出せないのは標本の権利関係のため。いつも「こんな面白い形をしてるのに、それを堂々と話せないのはもどかしい」と思っているので、8月11日の いきものふぇす、2022年冬のデザフェスに来てくれた人にもっと詳しく話せたらなと思います。
肢
標本の技術講習会で「疥癬にかかってボロボロの皮でも活用しよう」と足先だけ標本を作ったことがあり、その時は「足先だけでも立派な標本になるんだ」だけしか思わなかった。
時間が経過して、「剥製は立ち姿勢で足の裏なんか見たことがない。絵に描く時はどうやって想像するのだろう。」と思うようになり、足先標本の活用方法がまた見つかった気がした。
そしてまた時間が経過して「タヌキやモルモットは前肢・後肢の違い(指の本数が違うとか)が図鑑に載っているけれどシカやカモシカはどうなんだろう?」と思うようになった。
そこで、シカの足先だけ学生時代に貰ったものが冷凍庫に眠っていたので、実際に比べてみました。
左が前脚…なはず。
正直、ぱっと違いが分かりません。
なんとなく左の方がスレンダーな感じがします。
解剖といえばの先生と生でお会いする機会があり、そこで質問したのですが、「皮のみの肢一本だけだと見分けがつかない。前後で比較すると前の方がプロポーションが長い」という答えでした。
この他にもありがたいお話がたくさんあったのですが、私の頭では理解しきれず…。
正直、この足先は「同じ個体風にまとめられていた」だけで同一個体かどうかは怪しいです。前後は手根骨・足根骨から判断しました。
シカやイノシシの肢が今後手に入るか分かりませんが、その時は比較に再チャレンジします。
水で骨作り
私はいつも水で腐敗させて骨を作っています。
メリット
・夏場は数日で骨になる
・脱脂が簡単
デメリット
・夏場に小型動物をやると分解される
・臭い
・気温が下がると脂蝋がつく
・春や秋はうっかりするとピンク菌や苔がつく
・冬は無理
デメリットが多いですが、扱いに慣れると簡単です。
私は最初はポリデントでの除肉を行っていましたが、「肉を分解する」と言われてる効果を実感できませんでした。漂白もポリデントできるのですが、ワイドハイターを使用した方が漂白は早いです。
どの動物もそうですが作り方は
①除肉
②水浸け
③水換え(気温によっては1日に数回やるを毎日)
④除肉
⑤水換え
これの繰り返しです。
水換えのタイミングは濁って「これ以上放置すると中身が見えなくなるな」と思う段階で換えます。
その際に骨を揺すって肉を落とし、取れないものは再度ピンセットでつまみ、新鮮な状態とは違う関節の緩さを確認します。
緩ければ小型動物であれば漂白や乾燥に移ります。ピンセットでいじっていると、これ以上水に浸けない方が良い段階ではかろうじて骨が繋がっている状態がわかります。その時に漂白や乾燥に移ります。
中型動物であれば肉が塩辛のように緩くなり、腱だけが残っていきます。
中型以上の動物の骨は針金で固定するため、腱も除去します。ですが、手足の細かい骨(手根骨・足根骨)は並びがわからなくなるため、写真を撮ったり、指の骨(第1指、第2指‥など)ごとに小分けに袋に入れて順番が分からなくならないようにします。
歯も抜けるやつは抜いてなくさないようにします。
やることとしてはこれだけです。地道な除肉の繰り返しと水換え、部位分けだけです。
分けるための袋は三角コーナーネットや排水溝ネットを使います。
ちなみに、煮ての骨取りは「投げ込みヒーター」or「ボイラーで常に温められる」環境がない場合はオススメしません。(骨になってるのを洗う場合は別)
腱が硬くなるし、まとまった時間が取れずに煮ると骨が茶色くなります(絶対とは言いませんが体験談として)。大根に漬けてから煮ると柔らかくなるかもしれませんが。
また、沸騰させて煮ると骨が脆くなる可能性があります。私は子豚の骨を沸騰させて煮たら、割れた骨が出来ました。
感覚作業なので、何度も失敗して理想の骨を作ってください。
骨格標本作製への挑戦について
イベントに出るとよく「標本作ってみたいから教えて」
【準備するもの】
私は水で腐敗させながら作るので、水浸けで
※動物の大きさによって不要なものも含まれます
①個体が水に浸かる容器を複数個(
②ゴミ取りネット(小さめタイプ)
③ゴミ取りネット(三角コーナーなどに使う大きめのもの)
④輪ゴム
⑤先の細いハサミ
⑥ピンセット(先が細いタイプ)
⑦メスのようなカッター(ホームセンターに行くとあります)
⑧三角コーナー
⑨ゴミ袋(出た肉を捨てる用)
⑩練習用の〇体
⑪手袋
⑤、⑥、⑦以外は全て百均で揃えました(
⑩は爬虫類の餌で探すと入手しやすいです。中型サイズは人間用の食べ物で子〇タを購入すれば、美味しくいただきながら全身骨格ができます。頭と足先がないものでよければ、ローストチキンを買えば、内臓はないですが筋肉と骨の位置関係はわかります。道具を用意するのに5,000円~9000円くらい予算があれば準備できるのではないでしょうか。
【事前学習】
やる種類の骨格がどうなっているか書籍やネットの画像検索でよく勉強してください。私は哺乳類と鳥類は家畜解剖図説(新品は8,000円くらい)で勉強しました。爬虫類や両生類は画像検索しました。画像検索の仕方は「Frog bone」や「(学名) bone」などと入れて、ページ上部にある「画像」を選択し、解剖図で参考になりそうなものをスクリーンショットしてずっと眺めていました。ちなみに、なくなっている骨があるかもしれないので、骨格の写真は全くあてになりません。
【肉をなくして骨にする方法】
私が知っている方法を羅列します。
①水で腐らせる
メリット:夏場は腐敗が早く、脱脂もできる。
デメリット:とにかく臭い、小型動物は油断すると半日でバラバラになり組み立て不能に。冬は死蝋化したものが骨に付着する(中々取れない)
②土に埋める
メリット:臭くない。軟組織の処理に困らない。脱脂もできる。
デメリット:骨が土色になる。植物の根が骨に入り込む。細かい骨がバラバラになりやすい。
③煮る(鍋、ポット、炊飯器)
メリット:軟組織の処理が早い。脱脂も一応できる。
デメリット:小型動物は絶対にやめた方がいい。臭う。火にかける場合は火元から離れられない。
④ポリデントなどの薬品(私は昔やってましたが効果が分からず止めました)
メリット:漂白も脱脂もできる…らしい。肉が溶ける…らしい(結局、①と同じように水の中で腐敗しているんじゃないの?と思ってます。)
デメリット:独特なニオイがある。動物が大きくなると臭い。浸けすぎると残った腱の除去が難しい。水替え頻度に注意しないと骨がバラバラになる。
⑤虫(カツオブシムシ)におまかせ
メリット:綺麗に食べてくれる。うまくいくと何もしなくても全身骨格になる。
デメリット:カツオブシムシの飼育をマスターする必要がある。骨の引き上げ加減が分からないと骨まで食べられる。
思いつくかぎりの方法とメリット、デメリットを書きましたが、結局は慣れです。ある人には①の方法がいいけれど、②の方がやりやすい人もいます。「〇〇の方法は簡単!」といっている標本作成者がいたら疑った方がいいです。
水で腐敗させる方法をとっているのは「簡単に肉が取れる」からではありますが、小型の動物では肉が溶けるほど放置したらバラバラになります。なので、除肉は丁寧にやる必要がありますし、部位ごとに細かくネットに分ける必要性と、こまめな水替えも必須になります。旅行や遊びになんて無計画に行ってられません。生きた動物を飼っていると思って骨化作業に取り組んでください。
愛情をかけないと向こうもすねます!!本当に!!!
どの方法をとっても「部位ごとにキチンと分ける」「こまめに様子を見る」「骨の位置をよく観察する」これらのことが最低限必須になるのではないでしょうか。
【健康上の注意点】
未知のウィルスや野生個体であれば寄生虫だらけと思ってください。食卓や通常料理で使うものを代用しての作業はオススメしません!洗剤ですら骨用を用意してください。
私が学生時代に学んだ恐怖は「寄生虫は空中を舞う」です。寄生虫自体に飛行能力があるのではなく、糞や乾燥した土が空気中に舞ったときに一緒に付着していて、それを人間が吸い込んで寄生虫症になるというものです。寄生虫は細い素麺ばかりではありません。まったく寄生虫についての知識はなく不安を煽るものばかりですが、エキノコックスみたいに「数年後に暴れる寄生虫がいるかもしれない」と思いながら気を付けて作業してください。
たまに「素手で触る」人や「汚染された手袋のままスマホを触る」人がいてビックリしてます。女性は髪の毛にも注意してください。
【ぶっつけ本番でいきますか?】
ぶっつけ本番で骨にする方は頑張って下さい。
今回は事前準備について書きましたが、次回(未定)は水浸けでの骨にする過程について書きます。実際の骨の組み立てについては「骨格標本 作成」等のキーワードで検索すると出てくるので割愛します。
ちなみに骨の組み立てには、工具(ペンチ、虫ピンは必須)や針金(一個体に1~3種類の太さの針金を使っています)、接着剤、台座などをご用意ください。
ジュウシマツの骨
こちらのジュウシマツ骨は3月のいきものフェスオンラインで羽取
全てにおいて時間がかかりました。
今回、
翼は博物館にあるような標本は骨と羽の位置関係が分かるような作
小鳥は翼の中の骨を取るのは「とっっっっても」大変ですが、
別件にはなりますが、5月末のデザインフェスタでニワトリ頭骨の組み立てキットを販売し、バラバラになった骨の名称をまとめた資料をTwitterにアップしています。
7月中旬頃まで探しやすいように(固定ツイート)しておく予定です。
※標本作製の有償依頼受け付けています※
Twitter: https://twitter.com/
HP: https://honebeya206.com
アオジタトカゲ 骨格標本
アオジタトカゲの骨格標本ができました。
一度やってみたかった種類で、ミズオオトカゲの頭骨と比較しながら楽しみながら組み立てました。
ミズオオトカゲの頭骨と比較すると骨の種類は変わらないのですが、アオジタトカゲの方が頭骨がバラバラにならなそうな頑丈な骨のように見えます。
※アオジタトカゲの頭骨もこのまま水中で腐らせるとバラバラにはなります。
上記2枚がアオジタトカゲの頭骨
下記2枚がミズオオトカゲの頭骨
手根骨、足根骨はさすがに小さく、バラバラになってしまったら位置がわかっていても戻すのは大変なので腱を残して繋げてます。
今回こだわったのは壁に立て掛けても骨と台が離れないように四肢を針金で固定しました。あまりきつく締めると骨が折れたりはなれるので、力加減が難しく苦労しました。
骨を組むときに不思議に思ったのが鳥の肋骨にある突起(鈎状突起)と似たようなものがあり、これはミズオオトカゲと比べるとアオジタトカゲでは顕著でした。
↑アオジタトカゲの肋骨
↑ミズオオトカゲの肋骨
↑ガチョウの肋骨と鈎状突起
ミズオオトカゲ(オオトカゲ属)もアオジタトカゲ(アオジタトカゲ属)も同じ有鱗目ですが、ミズオオトカゲはオオトカゲ科、アオジタトカゲはトカゲ科、比較するなら同じ科で見ないといけないのかなと思います。
分類学をもっと勉強しないと説明が難しいのですが、「形が似てるなら比較しても問題ない」と思った方はドブネズミとニホンリスを比べるとイメージしやすいかもしれません。
ドブネズミとニホンリスは同じ齧歯目ですが、ドブネズミはネズミ科、ニホンリスはリス科となり、違う種になります。「ネズミとリスは違う」と思っていても目レベルで比較すると誤った見方になり、「ネズミとリスは似てる」と思って比較しても良い結果には繋がりません。
このアオジタトカゲは月末のデザインフェスタに持っていきます。
【デザインフェスタ】
開催日:5/29(土)、5/30(日)
時間:11:00~19:00
場所:青海展示棟
最寄り駅:青海or東京テレポート
※注意※
今回はいつものビッグサイトではなく「青海展示棟」です!
【出展内容】
今回はcrystallumのゆとり。さんとの合同出展になります。
ゆとり。さんは透明骨格標本を作製されているので、透明標本と白い骨の両方が観れる空間になります。
https://twitter.com/YTL_specimen
ブース番号:B-71
サークル名:儚標本堂
骨のある部屋は哺乳類・爬虫類・鳥類の全身骨格標本の販売を予定しています。(値段は1万円~8万円の予定)
※現金のみ
※骨格標本の作製依頼受け付けてます※
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